「例え話」に関する例え話

「例え」とは「見立て」である。
これは、2つのモノの間に関係を示す行為と云える。一方によってもう一方の姿を明らかにするのである。
例えば、日本庭園の庭石は山や島の「見立て」である。庭石を通して山や島を現前させるのだ。


例え話の読み解き方・使い方

議論においては、言及対象に対する主張があり、主張の説明として例え話がある。主張としての「説」を、例え話により「明らか」にするのである。


しかし、説明の方法としては少々問題もある。例えられたモノの属性が、主張とは関係ない部分まで結び付いてしまう、と云う問題である。
主張の説明のために例え話を用いるのであるから、「関係するのはこの部分だけですよ」と例え話の解説をすることはできない。仕方のないことではあるが、それ故に厳密性を要する議論では例えを用いないことが多い。


また、例え話と関係するのはあくまで主張であり、主張を通してのみ言及対象と例え話が結び付く。
言及対象と例え話を直接結び付けてしまうのは、説明ではなく「なぞなぞ」である。「AとBにはある関係があります。それはなぁんだ?」答えは百通りだってある。
「なぞなぞ」が解けないからといって、主張が理解されないと云うのは違う。


確かに、目的性の強い議論ではそういった手法もある。
「なぞなぞ」を出して相手が考えている最中に、「答えはこうですよ」と主張を提示するのである。相手は考えている最中なのだから、まだ答えには至っていない。そこに「正解」を与えることにより、考えることを中断させる。中断された考えは「正解」と結び付いてしまい、「自ら考えて出した正解」と錯覚してしまうのである。
手法としては合目的的であるが、錯覚を利用しているのだから端的に云えば「騙し」である。主張より先に例え話が持ち出された場合は、眉に唾した方がよい。


ただし、言及対象が「語りえないモノ」である場合は、「語りえない」のであるから例える以外の方法はない。この場合の語りは「説」ではなく「詩」となる。


「例えば、君がいるだけで心が強くなれること。」


「正解」は無い。